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特殊な治療

特殊な治療法

重度関節拘縮

 昨今の労働環境整備のおかげで、以前より重度の手部外傷は年々減ってきています。とは言え、どんなに労働環境を整備しても重度手部外傷(開放外傷、プレス、熱傷、高圧注入損傷、切断等)の発生が全くなくなる訳ではありません。初期治療の大きな目標はその損傷部位を温存することですが、残念ながらその後の機能障害の治療まで行われることはそう多くはありません。特に重度可動域制限が残ってしまうと、手指の機能は著しく低下します。

 従来の関節拘縮に対する治療は、切開をして癒着した組織を剥離、切離するという手術が主流です。しかしこの方法だと切開後の組織が再度癒着してしまいます。さらに、再度の拘縮が生じてしまうともあり、その場合には複数回の手術を要します。

 それを避けるために、当科ではイリザロフミニ創外固定器という器具を装着してもらい、1-2ヶ月かけて牽引を行うことでなるべく切開の負担をかけない治療を行っています。この方法により、重度の関節拘縮もある程度柔軟で日常生活に使える手指にすることが出来ます。

骨延長

 何らかの外傷や先天性疾患によって、指が短縮した状態になってしまった場合、同様にイリザロフミニ創外固定器を用いて骨を延長することにより、指を伸ばす治療法です。

 多くは切断などの重度外傷後に指が欠損してしまったような場合ですが、伸ばす骨の中央あたりを一旦骨だけ切離し、その前後に創外固定器を装着します。創外固定器は1日0.5mmほどのスピードで延長していき、その隙間に新たな骨が形成されていきます。創外固定器は通常3-4週程で外します。

骨折に対する創外固定法

 骨折の治療の基本的な第一目標は、折れた骨を癒合させることです。軽度の骨折はギプスなどの保存療法を行いますが、中等度以上の骨折や、内固定(直接骨をインプラントなでで固定すること)が望ましい場合には手術療法を行います。

 手術療法の大きなメリットは、強固な内固定力によって、骨がまだ完全に癒合していなくても動かせるという早期運動療法が可能となることです。逆にデメリットとなるのは、インプラントを挿入するためには皮膚切開が必ず必要です。皮膚切開をすると術後に軟部組織と皮膚、骨の間で癒着が起こり、可動域制限を来す場合があります。

 当科では、手術のメリットとデメリットの中間のような特徴を持つ、創外固定器による加療を行うことがあります。この方法は、切開をせずに創外固定ピンという強度の強い特殊な金属製ワイヤーで、皮膚の上から骨折部に挿入して固定します。さらにこのワイヤーを、イリザロフミニ創外固定で固定することにより、強固な固定力を得ることができます。この固定力によって、術後早期に開始することができますが、皮膚の上からワイヤーを挿入するため、関節を動かそうとしても軟部組織が引きつれるために、内固定による手術法ほどは可動域訓練を行うことはできません。しかしながら、切開をしない手術法であり癒着の危険性はあまりなく、ワイヤーを抜くのも数秒で終わりますので、内固定による手術法よりは侵襲度が少ないという利点があります。

橈骨遠位端骨折の症例
橈骨遠位端骨折の症例

音楽家の手

世の中にはスポーツ愛好家やアスリートなどをサポートする医師は多くいますが、それに比べると音楽家をサポートする医師は少数です。ですから音楽家の手の障害難民の方は多いと推測しているのですが、この音楽家の手の悩みの相談や治療を行うのが、『音楽家の手』という分野です。

 病院にいらっしゃる方の一番多い症状は使いすぎ(いわゆるオーバーユース)による症状です。体格に比べて楽器が重過ぎる、姿勢が悪い、純粋に練習のしすぎで痛くなる、といった事例が多くあります。しかしながら、残念なことにこの状態で病院にいらっしゃる方はあまりいないのです。そのまま放置すれば練習もままならなくなり、演奏会で良いパフォーマンスを発揮することはとても難しくなります。病院に来て治療を受ければ良くなりますが、一時的に練習を休んだり薬や投薬の副作用を心配したりすることは、病状が良くなることよりも大きな精神的なストレスがかかることです。

 我々はそのような音楽家の方々の症例も多く経験しており、実際スタッフの中井は音楽活動経験も豊富で色々なご相談に乗ることが出来ます。是非早期の来院をおすすめいたします。また、フォーカルジストニアといった難病についてのご相談も承ります。

切断指

 最近ではこのような重度外傷は、安全面の意識の向上からかなり減少している印象です。逆に言うと指の切断のような特殊外傷は、我々医療従事者側も経験する機会が減っており、一層専門性の高い医療分野になっていると考えます。当科では、切断指の再接着に必要なマイクロサージャリーの技術に精通した医師が在籍しておりますし、緊急手術にも対応いたします。

 しかし、適切な治療にも関わらず受傷状況によっては再接着が不成功に終わる場合もあります。その場合はなるべく指の長さを保つために、皮弁手術といった軟部組織の移植手術も施行しております。